広島の中心地、袋町の商店街に佇むロースター「BAGTOWN COFFEE」。そのオーナーである山本さんは、40歳を過ぎてからコーヒーの世界に飛び込んだ異色の経歴の持ち主です。元々グラフィックデザインの仕事をしていた山本さんが、どのような経緯で焙煎士となり、どのように焙煎と向き合っているのか、お話を伺いました。
山本さんがコーヒーに本格的に向き合うようになったのは、意外にも独立後のキャリアに悩んでいた時期から。
それまではグラフィックデザインの仕事一筋で、「コーヒーは仕事の合間に飲む程度で、特別なこだわりはなかった」と振り返ります。
ただ一つ、アメリカ出張時に現地で飲んだスターバックスコーヒーの美味しさに感動し、日本進出を待ち望んでいたエピソードが心に残っています。
「アメリカに出張したときに現地で展開していたスターバックスコーヒーを利用して、とても美味しかったのでぜひ日本にも展開してほしいとメールをしたことがありましたね。当時はまだ日本に展開していなかったんです。」
それは今となっては貴重な経験ですね。返事はあったのですか?
「ええ、返信をいただきました。そのうち日本にもオープンする予定という内容で、翌年くらいにオープンしました。そこから一気に広まりましたね。ただエピソードといってもそれくらいです。」
サラリーマンを辞め、独立した山本さんですが思った以上に独立の道は険しく悩む時期が続いていました。それを見かねたのか、たまたま縁がありコーヒー好きの母の紹介で地元のコーヒーチェーン店の新店舗で働くことに。これが転機となりました。
「飲食店のアルバイトもしたことがなかったんですが、そうも言っていられないということでフランチャイズのコーヒー店の店長をやることになりました。お店でコーヒーを提供するうちに、いろいろな店のコーヒーを飲み比べるようになり、次第にコーヒー豆のポテンシャルに魅了されていきました」と語る山本さん。
フランチャイズの店長を続けるという道もありましたが、当時店舗で使っていた焙煎機はあらかじめプリセットされた焙煎レシピでしか焙煎できない機械で、細かい設定をすることが難しいもので、自分の出しているコーヒーに段々と納得できなくなっていったと言います。
「いろいろなコーヒーを飲んで舌が肥えていったんでしょうね。気づいたら自分の出しているコーヒーに納得できなくなって、独立することを考えるようになりました。」
独立を決意した山本さんは焙煎の技術を磨くため、大阪の焙煎セミナーに泊まりがけで通い、基礎を徹底的に学びました。
そして2019年4月、袋町に「BAGTOWN COFFEE」をオープン。店名は、行きつけのバーのマスターが考案したものだといいます。
「店を始めるけれど店名が決められないと行きつけのバーで話していたら、店舗のある地名である袋町を英語にしたBAGTOWNが良いのではないかと。そして翌朝、マスターからロゴのデザイン案まで送られてきて、これだ!と思いました」と嬉しそうに振り返ります。
フジローヤルの焙煎機でオープン当初から自家焙煎のコーヒー豆を販売し、日々焙煎しながらコーヒーと向き合う日々を送りました。
しかし翌年2020年、山本さんは病気で入院を経験。さらに店舗の移転が重なるなど試練の時期を迎えました。
精神的に堪える日もありましたが、「また店に立てたら今まで以上に頑張ろう」と決意を新たにし、翌年を迎えます。そこで焙煎技術を競う競技会「ローストマスターズチームチャレンジ」に参加。ここで優勝を果たすとともに、他の焙煎士たちとの貴重な交流を得たといいます。
「焙煎士同士のつながりは本当に財産です。他の焙煎士のコーヒーを飲んだり、技術について話したりする中で、多くのヒントを得ています。」
そんな山本さんについて今後について伺うと、帰ってきた言葉はシンプルな一言でした。
「とにかく焙煎がうまくなりたい。」
オープン前から今でも毎回すこしずつ焙煎を変え、納得できるものを提供しようとしています。最近は焙煎のみならず、生豆の仕入れにも試行錯誤しその難しさと面白さを味わいながら、理想の一杯を追い求めています。
広島・袋町で、日々焙煎技術を磨き続ける山本さん。BAGTOWN COFFEEの店内には、そんな彼の情熱が注ぎ込まれたコーヒーが待っています。一度足を運んで、彼の生み出す一杯を味わってみませんか?
【店舗情報】
BAGTOWN COFFEE
住所:広島県広島市中区袋町2−1柳田ビル
営業時間:11:00-19:00
定休日:水
席数:屋外ベンチ5席
駐車場:なし
価格:500円~
サイト:https://bagtowncoffee.com/
Instagram:https://www.instagram.com/bagtowncoffee/
※最新の営業時間等は店舗に直接お問い合わせください。